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「で、またフラれたんだ?」
面白いと言わんばかりのにやにや顔のフランスがワインを片手に
話の続きを促す。女子でもないのに本当に浮いた話が好きだなと
スペインは同じようにビールの入ったグラスを傾けた。
スペイン・マドリードにあるとあるバルでは、
なんとはなしにいつものメンバーが顔を揃えていた。
「ケセセセセッ!やっぱ一人の方が気楽だろ!一人はいいぞー!」
もう既にビールをジョッキで何杯も飲み干しているプロイセンは
赤ら顔で酔っていることが分かる。
「今回はどれくらい持ったんだっけ?」
「んー…どうやったっけなぁ。ひと月は経ってへんのは確かやなぁ」
「ふーん、お前みたいなのにそれだけ持ったか。そこそこ頑張ったほうじゃない?」
「俺みたいなんって酷いわぁ」
確かに自分でも面倒な男だという自覚はあったが、他人から言われると胸に刺さるものがある。
「だってそうでしょ?自分は好きなようにするけど、束縛するな、
自分はお前のものにはならんってそんなんじゃあコイビトになった意味が無いでしょうよ」
恋人なら相手を独占したいと思うのも当然だし、
同じように自分もそうされたいものではないのか。
フランスはそう言ってワインを口に含んだ。
「…俺別に相手独占したいとか思ったことないわ」
別に相手が他に男を作ろうが別に構わないし、俺も好きなようにするだけだ。
どうせ国である自分と人間は生きている時間も違うし、結婚も出来ない。
だからそう言えば、フランスは呆れたように溜息を吐いた。
「だからさー、お前のいう恋人ってのは、ただのセフレでしょ」
「えーそんな品の無い言い方やめてやぁ」
「お前に下品なんて言われたくないねっ!」
あーあー、お前のコイビトになんかなっちゃった子が可哀想ー!
フランスは見も知らぬ相手の子を思って嘆く。あぁ、本当に可哀想だ。
見た目陽気で人の良さそうなスペインだが、少し人の気持ちに鈍感なところがある。
きっと今回の子も相当我慢したがそれに耐え切れなかったに違いない。
「はぁ、なんで上手くいかんのやろなぁ。まぁえぇか。次行こ、次!」
これである。フランスは頭を抱えたくなった。
「だーから言ってんだろー?一人の方がいいぞ!」
「うーん、俺はお前みたいに孤独を楽しめる高尚な男ちゃうからなぁ」
「ケセセセセッ!スペインお前分かってるじゃねーか!」
プロイセンは遠回しな皮肉に気付かず高尚な男という響きに嬉しそうにテンションを上げた。
機嫌よくビールを追加していくプロイセンを横目で見ながら、
暫く静かに杯を傾けていたスペインに、フランスが口を開く。
「…もういい加減にすれば?自分の気持ち誤魔化すの」
「んー?何のこと?」
「どうせ他探したって見つからないよ。だって、
お前の求めてるものに代わりなんてないからね」
ギクリとスペインは一瞬動揺を見せたが、直ぐに誤魔化すように笑った。
「今回はあかんかったけど、次は…」
「誤魔化したって無駄だよ。お前が一番望んでるもの、
大切にしているのは他の誰でもない、ロマーノ。
ただ一人だけだ。無駄なんだよ、お前がいくら他探したところで見つかりゃしない」
「…え、えー…?そりゃロマは俺の大切な子分やけど、コイビトとかとは…」
「だからもういいっての。お前がロマーノのこと好きなのなんて、とっくに知ってたし
お前と関わりあるやつなら多分相当鈍感でもない限り皆気付いてるぞ」
まさかとぎょっとする。ロマーノがまだ小さな頃から面倒を見てきて、
ずっと親分として接してきたはずだ。ひた隠しにしている恋心を悟られたりなどしていない。
そう思っていたスペインは動揺を隠せなくなった。
「うっ嘘やろ?」
「あれでバレてないと思ってたんだ?」
「俺親分としてしか接してないはずやけど…」
「何百年も手放さないで傍に置いておいて、奪われたら必死になって取り返しに行って、
ひたすら甘やかして自分の腕の中から離さなかったのはどこの誰なんだ?
何が束縛しない、執着しないだ。嘘つけ。ただ単に相手がそういう対象じゃないだけ。
スペインがそれを求めてて許せるのもロマーノだけ。そういうことだろ」
いい加減認めて腹括ってしまえ。そう背を押そうとするフランスに頭を振って拒否を示す。
アルコールが入った頭で振ったせいか、くらりと一瞬眩暈がした。
「無理無理無理やって!俺ロマを恋人にしたいとか…そんなん…」
「へー…?じゃあロマーノに恋人出来たらどうするの?お前」
女の子にナンパしてフラレるのが常なロマーノだけど、
いつかそういう存在が出来てもおかしくないだろう。
しかし、スペインには想像もしたくなかった。
ありえない。ロマーノに恋人なんて、そんなの。
険しい顔つきになったスペインに、フランスは肩を竦ませた。
「そんな怖い顔するくらいなら、さっさと言っちゃえば?」
簡単だろう。今まで女の子にはそうやって口説いてきたんだから。
スペインは顔をテーブルに伏せた。
「無理やって。やってロマ、男は嫌いやん」
好きなんて言ったらどん引きされて嫌われて避けられるのがオチだ。
それくらいならずっと親分で傍に居られる方がいい。
「好きや、なんて言えんわ。もうこれ以上離れたないもん」
最初に会った時はそりゃ『かわいくなー!』って思ったけど、小さい身体で怒って泣いて笑ってと
忙しく表情を変え、することなすこと子供なくせに、時々とても大人びて冷めた瞳をする。
目が離せないと思った。
俺が怪我をして帰って来た時には『ボロボロじゃねーか』と笑いながら、
そのくせ俺が寝た後にやってきて手を握り自分の痛みであるかのように涙を流した優しい子だ。
背が伸び、声変わりをして、ロマーノが自分の傍で成長していく様をみているのは楽しかった。
ロマーノは今ではすっかり大人だがその容姿は小さな頃から整っていると知っていた
スペインですらときどきはっとするほど美しい。
ヴァチカンの仕事で白の法衣を纏った姿などは言葉も出てこなくなるほど神々しく
天から舞い降りた天使かと思うほどであった。
(あぁ、うん…あの子は俺の天使や…ほんまかわえぇ)
好きだな、と思った。確かに自分はあの子が好きで、誰にも渡したくなどない。
身も心も、あの子を自分のものに出来たらどんなにいいだろう。
触れたい、と不埒な欲求が頭を擡げ始めるが、それはいけないと欲望を押さえつけてきた。
だから代わりを探しているのだ。ロマーノ以上に愛せる人を。
(まぁおらんよなぁ…ロマ以外なんて、ほんまはどうでもえぇし)
テーブルに頬をつけたまま指先でグラスをなぞった。
水滴もすっかり消え、きっと中身は生温くなっているんだろうなと頭の端で思った。
「…ロマにほんまに嫌われたら俺…生きていかれへん」
独り言のように呟いたそれに、面白がるような声がかけられた。
「へー?えぇこと聞いたわ。こりゃ今度ロマーノに会うたら言うたろ」
あまり聞きたくないが聞きなれた声にがばりと身体を起こした。
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自己紹介:
西ロマ早く結婚しろ!が口癖。現在APHにドップリ嵌っています。ロマーノは俺の嫁。
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