今回は諦めるか、いやでも次に回すにしてもいつになるか分からなくなるし…
あれこれ悩んでいたのですが、漸く何とか形になりそうなので。
悩んでいたらこんなギリギリになってしまったんですけど…;;;;;
タイトルは『鏡の中のロマーノ』その名のとおり、鏡に取り込まれたロマの話です。
適当なあらすじとサンプルを続きにのっけてます。
あらすじ:世界会議の会議場の倉庫で綺麗な鏡を見つけたロマーノが、
うっかりその鏡に取り込まれてしまう。
それと同時に元々鏡の中にいた『鏡の中のロマーノ』が外に出ていって
煮え切らないロマーノの代わりに自分が『ロマーノ』になる、と言って…?
――――――スペインと一つになることで自分は完全なロマーノになる。
そして、お前は今日の夜0時までにそこから出ないと一生出られなくなる――――――
さぁ、ロマーノは鏡の中から出ることができるのか、
スペインは『鏡の中のロマーノ』に誘惑されてしまうのか!?
…みたいな内容です。(笑)
【サンプル】
「うっ……」
薄らと目を開けて頭を押さえながら立ち上がると、どこまでも果てのない
闇の中に立っていることに気がついた。
まるで今朝見た夢の続きのようで、不安に襲われた。何故こんなところにいるのか。
夢なら覚めろと何度も念じてみるが、一向に覚める気配はない。
周囲を見渡し、やはり闇以外何もない…と思われたが、あの鏡がぽかんと浮かんでいた。
吸い寄せられるようにその鏡の元に向かうと、確かにあの鏡だ。
「すげー、俺こんなに忠実に夢の中で再現できてる!」
一度見ただけなのに、俺天才!と喜んだのも束の間、違和感に気がついた。
…鏡の中に映るはずの自分の姿がない。
代わりに、鏡の中には鏡のあった部屋だけが映っていた。
(何だ、これ…どうなってんだ…?)
じわりじわりと手足が冷えていく。何故か胸騒ぎを覚え、心を落ち着かせようとした。
(ダメだ、何焦ってんだ。これは夢だ。夢だ!)
「…残念だが、これは夢じゃないんだ」
背後からかかった声に、ビクリと肩を震わせ、恐る恐る振り返った。
聞き覚えのある声だった。
そして声の主と思われる人物を見て、今度こそ驚愕した。
「何だ、そんな驚いた顔して。…自分の顔だろーが」
チョコレート色の髪、オリーブ色の瞳。口角を上げた笑みを向けるその人物は、
自分に…いや、イ.タ.リ.ア=ロマーノに酷似していた。
目を見開いたまま硬直している俺にゆっくりと近づいてきたその人物は、
目の前で不適に笑った。
「…お、お前、誰だこんちくしょうめ!」
「誰?見て分からねーか?俺は、ロマーノだ」
「ロマーノは、俺だ!」
そういうと、『ロマーノ』と名乗る俺に似た男は、クツクツと可笑しそうに笑った。
「そう、けど俺も“ロマーノ”だ。俺は、鏡の中にいるお前だから」
「か…鏡の、中…?」
何だ、嫌にファンタジーな夢だな。もういいから早く覚めてくれ。
「そう、鏡の中。俺はお前の影だ。――――――でも」
『いつまでも夢だと思ってんじゃねーよ』
「なっ…うわっ!」
心の中から響いてくる俺じゃない声に驚いていると、
ふわりと身体が浮いたかと思うと背後の鏡に思い切り叩きつけられる。
体中に感じる痛みに、これは夢じゃないと実感させられた。
「痛いか?まぁ、次期にそんな痛みも感じなくなる。
これからは、お前が俺の『影』になるんだからな」
「っく……どういう、ことだ…?」
「いつまで経ってもうじうじと煮え切らねーお前に代わって、
俺が『イ.タ.リ.ア=ロマーノ』になってやるって言ってんだ
有難く思え」
ふんと腰に手を当ててそう宣言した『鏡の中のロマーノ』は
俺の胸倉を掴み、まるでゴミでも捨てるように俺を投げ捨てた。
ダンッと暗闇の中に投げ出された身体が痛みで悲鳴をあげた。
「うぐっぅ…」
「情けねーの。ほんっとムカツク野郎だぜ。いつまでもめそめそ弟や周りのせいにして
いじけてんじゃねーよ…蛆虫野郎はそこで好きなだけ泣きべそかいてやがれ。
…俺が代わってやる」
そういうと、『鏡の中のロマーノ』は鏡の前に立ち、その鏡に触れた。
するとずぶりとその手を鏡が飲み込んでいく。
「待て、お前…!」
『鏡の中のロマーノ』はくるりと振り返ると、ニヤリと笑い、
その姿は完全に鏡の中へと消えた。
痛む身体を引き摺ってその鏡に触れるが、鏡は何の反応も示さない。
しかし、先程見た時には映らなかった自分自身が鏡に映りこんでいた。
『鏡の中のロマーノ』は、俺に向かって笑みを浮かべると口を開いた。
「さぁ、今日からお前が『イタリア=ロマーノの影』だ。
俺はこっちの世界でお前の愛する男と一つになって、
完全なる『イタリア=ロマーノ』になる!そうしたら、お前は一生そのままだ」
「な、なんだと…!?どういうことだ…っ!」
「このまんまじゃ、不完全なんだよ。俺はお前の影だけど、影なだけで本物じゃない。
だから、俺はお前のだ~い好きなスペインと繋がることで完全にお前になれるってことだ」
(な、に…!?)
スペインと…ひとつに…?馬鹿な、そんなの『俺』の姿で出来るわけがない。
スペインは俺のことなんて、何とも思ってないのだから。
「…残念だったな、スペインは俺のことなんて、」
「それはどうかな。やってみなきゃ分からねーだろ。それに、もしも繋がれなくても…
今日の夜0時までにそこから出られなきゃ、お前は一生そのままだ」
「なっ…!?」
「どっちしろ、お前はもう影でいるしかねーんだよ」
「冗談じゃねーぞっオイ!どうやったら出られる!教えろっ!」
「さぁな。自分で考えやがれ」
『鏡の中のロマーノ』は鏡に背を向け、部屋を後にした。
パタリと閉じたドアの外で、クツクツと笑った。
(さぁ、どうするロマーノ。うじうじ悩んでるだけじゃ、そこからは出られないぜ)
『鏡の中のロマーノ』は自分の目的を達成するために、倉庫から出て行った。