スパコミ関西19にて発行予定のコピー本のサンプルです。
この夏の暑さなら許されると思って書いたいろいろぶっ飛んだ話です。
R18的な部分のサンプルはぴくしぶにてご確認ください。
【あらすじ】
とある遊園地のオーナーの親分がバイトに入ってきたロマーノに恋心を抱き、
しかし接点のなさ、他人行儀なロマーノに対して何も行動を起こせず
ただ見ていることしか出来なかったのだが、ある日接触を試みることに。
ロマーノと接するうちに彼に好きな人がいることが発覚。
そのとき親分の取った行動は…――――――。
※R18
※遊園地のオーナー西×バイトロマパラレル
※パラレルだけど国名表記
※親分が変態でストーカー
※流されやすいロマーノ
※無理矢理・強姦・陵辱?的な要素アリ(軽い拘束もあります)
※割と何でも大丈夫な人向け
一つでも気になる点がございましたら、
閲覧をご遠慮ください。
同僚から休憩の交代をしてもらい、漸く昼休憩に入ることが出来て一つ息を吐き出した。
園内中央広場にある時計の針は二時を指している。
ここはトマトランドという名前だけあり、トマト好きなら一度は来たい場所で
かく言う自分も園内のアトラクションからレストラン、ショップに至るまで
トマト尽くしなのに魅了され、ここでなら働いてみたいと素直に思ったのだ。
一年前面接を受け、晴れてここのスタッフとして働いている。
最初は失敗するたびに辞めようかと思ったのだが…――――――
ある人の笑顔を思い出して、もう少しだけ頑張ろうと思い直し、
そうやって日々何とか仕事をこなしているのだ。
今日はまだ何も問題が起きていない。少しは成長したと思いたい。
(さて…今日は何を食べようか)
園内のカフェでランチを頂くか、ピッツェリアで焼きたてピッツァを食べるのもいいな。
フードコートで適当に何か摘むか。
思案しながら歩いているとバイトに入って直ぐに世話になった
ベルギーに会った。笑顔で手を振ってくれるベルギーは可愛い。
一緒にランチでも食べるかという誘いにベルギーは笑って
『今済んだところやわ、ごめんな』と自分の持ち場に戻って行ってしまった。畜生。
さて、どうするか。再び考え始めたのだが、
もう足は匂いにつられてピッツェリアに入ってしまった。
そこでピッツァとドリンク、サラダのセットを頼んで席についた。
ふと店の窓から楽しそうな家族連れ、女性の二人組み、
カップルに何故か嬉しくなって目を細めた。
うん、今日もいい天気だ。
*
金髪カツラをセットして青色のレンズが入ったメガネをかけて、
ちょっとヤボったいスーツからTシャツにジーンズというラフな格好に着替えた俺は、
現在一人で昼食を取っているロマーノを影からこっそり観察していた。
(あぁぁぁ久しぶりに生のロマーノ見た…!かわえぇ!)
しかし、今日は見ているだけでは終わらない。兎に角接触を試みる!
そのための変装なのだから。
よし、と気合を入れてロマーノに近づいていく。
ピッツェリアからロマーノが出てきたところで、若干焦りながら声をかけた。
「キミ、ロマーノ君だよね?」
「はぁ?…なんだよ、アンタ」
「私は週刊『SPRM』の記者でして、こちらのトマトランドを取材にきたのですが、
記事を書く上でスタッフのオススメスポットやメニューなんかを載せたいと思ってね。
広報に相談をしたらキミを貸してくれることになったんだよね」
「はあぁ?何を勝手に…つーか、俺ただのバイト…」
「いやぁ、こんなイケメンスタッフがいるとなれば女性も食いつくと思うんだよね~。
というわけで協力したって、あ、いや…してくれないかなぁ?」
うっかり地が出そうになり慌てて取り繕う。むちゃくちゃ訝しんでいるロマーノに
冷や汗をかきながら、あ、そうそう。上司にはもう許可を取ってる(職権乱用)から、
これから直ぐに付き合って欲しいんだけど、と言い募る。
怪しまれているようだが、事前に用意しておいた名刺を渡して何とか信用してもらって
ロマーノのお気に入りの場所やアトラクション、店に案内してもらい、
メモやら持参したカメラで写真を取っていく。
もちろん、カメラにはロマーノの姿もばっちり映している。
(後で編集するん楽しみやんなぁ)
最初は警戒していたロマーノも徐々に打ち解けてくれたようで、
今では和やかに会話出来るまでになった。
(あぁ、ロマーノかわえぇ…それになんかえぇ匂いする…たまらん)
そこかしこで売られている屋台のチュロスを食べながら、
唇についたチョコを舐めとるロマーノに
内心叫びながら鼻血を垂らして写真を撮りたい(いや動画の方がいいか?)衝動に駆られたのだが、
寸でのところでどうにか耐えた。
ここで何もかも吹っ飛ばして襲い掛かっては元も子もない。
何のために変装までしているのか。
(ロマーノと、またこうして普通に話したかったからやん)
傍で笑って欲しかったから。もっと、ロマーノのことが知りたかったから。
そして、ほんの少しでもロマーノに触れることが出来たら、俺は。
「で、オススメアトラクション、最後はやっぱりこの観覧車だな」
トマトを模した丸いゴンドラが低速回転している乗り物で一度乗ると
一時間は降りてこられないという大きなものだ。
その分眺めは最高で夜にはライトアップした園内から周辺の夜景まで眺望出来る。
特に恋人たちに人気の定番アトラクションだ。
「俺的には可愛い彼女と夜に乗りたいところだな」
「そうかー、じゃあ乗ってみようか二人で」
「え、おいっちょっ、俺は乗らねぇ…って」
男と二人では乗りたくねぇ!というロマーノを無視して強引に観覧車に二人で乗り込んだ。
むすっとした顔をしているロマーノに、ごめんな、と手を合わせて謝る。
「これも仕事だから…な?」
「フン……つーか、近い!何で隣に座るんだ!バランスわりぃだろ!」
「まぁまぁ、それより…ロマーノ君さっき彼女と乗りたいって言ってたけど、彼女いるの?」
地が出ないように言葉を選んでゆっくりと話す。
それにロマーノはガックリと肩を落とした。
「……いねぇ…畜生!別に好きで独り身なわけじゃねーからな!たまたまだ!」
「あー…ドンマイ☆」
「慰めるなぁあああっ!」
余計に虚しいと叫ぶロマーノに内心安堵して、じゃあと次の質問する。
「好きな子、とか…いてる?」
あ、しまった!気付かれるかなと内心焦ったが、気付いていないのかロマーノは
頬を真っ赤なトマトのようにして、でも静かに頷いた。
それに、心の中のどこかが急速に冷えていった。
トマトのようなロマーノは可愛いと思うのに、上手く笑えない。
取り繕うことも出来ない。
「その人、年上だし…大人だし。せめて少しくらい追いつきたいんだけど、
やっぱ無理だよなぁ。変に意識しちまうから会っても上手く話せねーし…
もう何ヶ月も話してねー…」
素直になれない、ほんと不器用で自分が嫌になる。
でも、――――――好きだ。
そう切々と語るロマーノの横顔はとても綺麗で。
綺麗で――――――汚したくなる。
(誰やねん、ソイツ…俺のロマーノやのに)
(俺のロマーノ…俺のロマーノやんなぁ)
――――――誰にも渡せへん。
ぷつんと何かが切れる音がした。
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冷静になって振り返ったら負けだと思ってる。