そんな自分を奮い立たせるように5巻発売。
そして本家様の仮いんでっくすショック…!
親分子分は今日も可愛い。
ぴくしぶに5話までを纏めて上げたら早速いろんな方がブクマしてくださっ…て…
うわあああああっどうしよう!?
もうこれは落とせない。死ぬ気で頑張るしかない。(2度目)
なのに帰宅時間が遅くなる一方…真っ白なゲンコー…。
ちくしょう、会社爆発しろ!!(コラ)
続きに6話ぐらいからの話の改稿版。
(なぁ、アントーニョ…)
ほんの少し前に声変わりをした少年の甘やかな掠れた声に
思わずごくりと生唾を飲み込んだ。
目の前の少年は僅かに潤んだ上目遣いで、
計算してか、それとも無意識にか。
男を煽るようなその瞳から、目が離せない。
何もつけていないはずの唇が艶めいていて、
噛み付きたい衝動を理性で留める。
綺麗な指先は、己の着ていたシャツのボタンを
ゆっくりと外し始め、そして…――――白い素肌を露にして、言うのだ。
(…抱いて)
…―――――――――――と。
「うわああああっ!!」
神様すんません!ほんま、ごめんなさい!出来心なんです!!
…と、夢から飛び起きるのは何度目だろうか。
既に数え切れないほどだ。
…どれだけ欲求不満なんだ、青臭いガキじゃあるまいしと自分自身に呆れた。
しかし夢というにはあまりにリアルで生々しい。
それもこれも、きっと隣で眠る少年のある癖のせいに違いない。
ちらりと隣を見遣り、深く溜息をつきながら頭を抱えた。
「…勘弁してぇや…。」
猫のように丸くなって隣で眠るロヴィーノは、何も身に付けていない。
そう、彼は何故か裸で眠る癖があるのだ。
せめて下くらい履いて欲しいものだが、鬱陶しいからといつもこうなのだ。
まだ幼い頃…―――そう、5年前ならまだ『可愛い』で済んでしまっていたが、今は。
…昔から整った顔立ちをしていたが、最近では『可愛い』というよりも
『美しい』や『綺麗』が当てはまる美貌で、女性のような丸みも柔らかさも
ないはずなのに、線が細いせいか中性的な印象を与える。
そんなロヴィーノが、全裸で隣で眠っているのだ!
まだ成長途中とはいえ確実に大人になりつつある身体は朝から強烈すぎる。
「………ん」
すやすやと穏やかに眠るロヴィーノがふいに寝返りをうって
ころりとアントーニョの更に距離を近づけてきた。
驚いて固まった俺には気付きもせず、身体を摺り寄せてくる。
落ち着いてなど、いられようか。いや…いられまい!少なくとも、俺には無理だ。
無意識に伸びそうになる右手を左手で押さえ込む。
(待て。待て。待て。待て!)
何を考えているんだ、自分は。
まだロヴィーノは子供なんだから、手を出して良いわけがない。
それでなくとも父親のように兄のように接してきたのだ。
手を出すわけにもいかないし、出来ない。
俺はロヴィーノの信頼を裏切りたくない。
彼をを傷つけるようなことはしたくない。
まだロヴィーノは純粋な子供で俺の邪な感情なんか、知って欲しくない。
知られたくない、こんな感情は。
ロヴィーノのことは、好きだ。
多分俺は彼に恋をしている。多分というのは自分でもよく分からないからだ。
何しろ誰かをそういう意味合いで愛したことなどないから、戸惑っている。
誰かとキスをしたり、セックスをしたりというのは経験があるし、気持ち良いことは好きだった。
だけど、こんなふうに相手の一挙一動が気になるような、こんな気持ちは知らない。
いつからかは分からないけれど…いや、多分出逢った時から始まっていたような気もする。
手放したくない、ずっと傍に居ってほしいと願ってきたし、
大事に、大切にしたい存在であることは昔から変わらないけれど、
そこに彼を独占したい、自分のものにしたい、抱きたいという
腐った欲望を抱くようになってしまった。
ロヴィーノには無償の愛情を注いできたつもりだった。
なのに彼を愛するということに同じように自分を愛して欲しい、と
見返りを求めてしまうようになってしまった。
だがこんなこと、ロヴィーノには言えるはずもない。
せめて彼がもう少し大人になるまでは自分のこんな感情は押さえ込まないといけない。
これが何かの拍子にロヴィーノに伝わってしまって、
嫌われるのは嫌だし避けられるのも悲しい。
だから、極力ロヴィーノに触れないようにした。
そうしたらどこまでが良くてどこからがNGなのか、分からなくなった。
ちょっと前の自分はどうやって彼に触れていただろう。
…なんで、平気だったんだろう。
*
「…というわけで、なんかもう…ロヴィーノにキスもハグも
出来へんくなって…!なぁなぁ、どうしよ~~~~~っ!?」
「知りませんよ。仕事しなさい、このお馬鹿さんが!」
パタパタと身振り手振りで今とても悩んでいることをアピールしながら
エーデルシュタインのローデリヒの執務室で部屋の主に相談すると、
一瞥もくれずにばっさりと切り捨てられた挙句ゴスッと本の角で殴られた。
(ローデリヒ、それは痛い…!)
一度はその攻撃で応接用のソファに沈んだアントーニョだったが、
それでも口を噤むということはなかった。
「ぁぁぁあああっロヴィーノに触れんなんて…!もう拷問や!
ロヴィー…ロヴィー…ロヴィーノォオオオ!!」
「お黙りなさいっ!いい加減にしないと、そのお下品な口
二度と喋れないように、縫いますよっ?!」
「そんなん言うたかて…もう俺、限界…。」
「こっちの方が限界です。…今の彼に手を出したら例のことには協力しませんからね。」
「それは困る!…けど、」
言いかけた俺の言葉はローデリヒの大きな溜息で掻き消えた。
ずれたメガネをくいと指先で押し上げると冷たく言い放った。
「そんなにお困りなら、最初から別々のベッドで寝れば済むことでしょう。
本来ならばもっと早くにそうするべきのはずですが?」
(そんなん、俺かて分かっとるよ!)
アントーニョは口には出さずに呟いた。
自分でも失敗したとは思っている。
でもこんなふうに気持ちが変わるとは思っていなかったのだから仕方が無い。
ロヴィーノは、一人で居ても発作のように泣きじゃくることはなくなった。
でもそれは人前で泣かなくなっただけで、平気になった訳じゃない…と、思う。
(…たまに帰ってきたら目元とか、赤い時あるし…)
それを見つけた時はどうしようもない罪悪感に駆られた。
寂しい思いをさせてしまっている自分が嫌になるくらいだ。
最近は忙しくて中々一緒に過ごせないし、
自分もロヴィーノが居ないあの大きなベッドで眠るのはとても寂しい。
だから、別々に眠るという選択肢を選べないのだ。
――――だからせめて服着て寝て欲しいのだが…。
「…ア―――――!!もうどないしたらえぇんや…!?」
「全く五月蝿い人ですね…いい方法がありますよ」
「いい方法?」
きょとりとローデリヒを見ると、彼は徐に執務机の引き出しを開けて冊子を取り出すと
それをアントーニョに手渡した。
冊子は自分達の出身学校の入学案内のパンフレットのようだった。
「ロヴィーノを寄宿学校に入学させれば良いのでは?
今の彼の学力は同年代の彼らよりも少し上のようですが
あの家でいるよりも、いろいろ学ぶことが出来るでしょうし、何より…
同年代の友達も出来るでしょう。そうすれば…―――――――」
「――――――あかん」
ローデリヒの言葉に即答した。
ロヴィーノが自分の元から離れるなんて考えられない、考えたくも無い。
そんなのは嫌だ。誰がそんなこと望んだ?
友だち?いらない。そんなものはロヴィーノに必要はない…――――――!
(だって、ロヴィーノは俺のやん。俺だけのものやん)
「離れるとかそんなん絶対、嫌や!…友達?必要ないわ!
ロヴィーノの話し相手やったら俺がするし、必要なことは俺が教える!
離れて暮らすなんて考えられへん。
なんでお前はそうやって俺とロヴィーを離そうとすんの?いい加減に…―――――!」
「いい加減にするのは貴方の方でしょう!」
珍しく声を荒げたローデリヒは俺が黙ると静かに口を開いた。
「アントーニョ、貴方はそうやってあの子を俗世から切り離して…孤立させてどうするんですか。
彼にはきちんと家族がいる。本来ならば彼らの元に返してあげるのが筋でしょう。
けれど今は貴方の我儘でそれを彼らに黙っているんですよ?
その分きちんと彼を教育し、立派に育てるのが道理。
彼は貴方の人形ではない、彼の人生は彼自身のものです。
貴方という選択肢以外のもの全てを断ち切るなど、身勝手すぎる。
私は鳥篭の中で守られることが、彼の“幸せ”に繋がるとは思いませんが?」
眼鏡の奥の瞳が鋭く睨みつけてくる。
ローデリヒは、彼なりにロヴィーノを心配しているのは解かっている。
解かってはいるのだ。…ローデリヒの言うことは正しい。
言い返す言葉が見つからなくて唇を噛んだ。
我儘だとは分かってる。でも…俺は今更ロヴィーノを手放せない。
「あのことは、本人にはまだ言ってないのでしょう?言いにくければ私から話しますが?」
「…ロヴィーノのことは俺が一番解かっとるんや!口出しせんといてや!」
拗ねたようにそっぽを向いて唇を尖らせるとローデリヒは呆れたように溜息をついた。
「解かりました。ですが…将来困るのは貴方ではなく、彼ですよ。全て、貴方の責任ですよ」
「それも、承知の上や。…責任はとる。」
そう強く言い切ると、ソファから立ち上がって振り向きもせずに部屋を出た。
ごめんな、ロヴィーノ。
俺はお前のこと、誰にも渡したくない。
俺以外の誰かのこと見るのも、考えるのも許せないくらい。
それがロヴィーノを孤独にさせると解かっていても。
俺はもうロヴィーノの居ない生活が考えられない。
彼を手放すくらいなら、邪な感情は押さえ込んでみせる。
湧き上がってくる感情を押し殺し続ければきっと前みたいに戻れると信じて…。
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ひとりで悶々している親分はとても書いてて楽しいです。